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ものづくり白書2026|製造業の人材不足・技能継承課題を人事向けに解説

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ものづくり白書2026|製造業の人材不足・技能継承課題を人事向けに解説

2026年5月29日、経済産業省より『2026年版ものづくり白書』が公表されました。
本白書は、日本の製造業を取り巻く現状や課題、今後の成長戦略を整理した重要な年次レポートです。

一方で、全261ページにおよぶ内容を読み解くには相応の時間が必要です。
なかでも製造業における人材不足は、採用・育成・技能継承に影響を及ぼす構造的な問題となっています。特に人事部門では、「採用しても育たない」「技能が継承されない」といった課題が顕在化しています。

本記事では、白書の中から「人材」に関する内容に絞り、人事部門が押さえるべきポイントを整理します。データをもとに、今なぜ人材育成が競争力を左右するのかを解説します。


ティーネットジャパン

本記事は、株式会社ティーネットジャパンが作成しています。
当社は製造業向けエンジニア育成に長年携わり、機械設計・電気設計・生産技術分野を中心とした技術研修を行っています。
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1.製造業の現状|人材不足が経営課題の中心に

『ものづくり白書2026』第1部 第1章 第2節の“我が国製造業を取り巻く社会情勢変化”では製造業を取り巻く外部環境の変化が整理されています。
中でも注目すべきは、「人材・労働力不足」が多くの企業にとって重要な経営課題となっている点であり、以下のような数値が示されております。

● 事業に影響を及ぼす社会情勢の変化(図122-1)
  『人材・労働力不足』:70.9%(前年比+4.2pt)
  他の事項と比較しても、『原材料価格の高騰(85.8%)』に続いて全体2位
● 直近3年間で実施した企業行動(図122-3)
  『賃上げ(従業員への還元)』:79.4%(全体2位)
  『人材確保・育成』    :55.1%(全体4位)

この結果から、「人材不足→賃上げ→育成強化」という流れが、企業の標準的な対応となっています。製造業では「人材不足への対応」が単なる人事課題ではなく、賃上げや投資判断にも影響する経営課題へと格上げされているといえます。

2.製造業の人材不足はなぜ深刻化しているのか

第1部 第2章 第1節の“ものづくり人材の雇用と就業動向”では、製造業の人材不足の背景や人手確保への対応が言及されております。製造業の人材不足は「単なる採用難」ではなく、構造的な問題として長期化しており、白書データからは、以下の複数の要因が複合的に影響していることが分かります。 

製造業の人材不足の背景

 

製造業と非製造業の就業者数推移から見る製造業の人材不足の背景

このグラフは、過去24年における製造業・非製造業の就業者数の推移(図212-1)を示したものです。
単年変化のばらつきはありますが長期視点で見ると、非製造業の就業者数は増加傾向にある一方で、製造業は減少傾向にあります。

非製造業就業者:13.0%増加 (2002年度:5,128万人 ⇒ 2025年度:5,795万人)
製造業就業者 :14.1%減少 (2002年度:1,202万人 ⇒ 2025年度:1,033万人)

直近の変動においても製造業は3.3%の減少傾向(2019年:1,068万人 ⇒2025年:1,033万人)にあることや、製造業と非製造業の合算数値を見ると増加傾向にあるので、製造業が就職先として選ばれづらくなっているといえます。こちらは過去の記事で要因を分析しておりますが、学生などにおいては志向が情報系・IT系技術者へとシフトしていることも一因と考えられます。

その他、人材不足の背景に関しては以下の3つが示されております。

● 過去24年における若年就業者数(34歳以下)数の推移(図212-2)では、
  製造業における若年就業者の割合:6.4pt減少 (2002年:31.4% ⇒ 2025年:25.0%)
  ここ10年は25.0%前後で横ばい傾向

●過去24年における高齢就業者数(65歳以上)数の推移(図212-3)では、
 製造業における高齢就業者の割合:3.5pt増加 (2002年:4.7% ⇒ 2025年:8.2%)
 ここ10年は8.5%前後で横ばい傾向

●過去17年における新規学卒者のうち製造業への入職者数及び製造業への入職割合の推移(図212-4)
 では、新規学卒者の製造業への入職者数は2013年から2020年まで緩やかな増加傾向で推移し、
 2020年は16万人を超えていましたが、2021年以降は約13~14万人にて推移しております。

上記より、製造業の就業者において、2002年から2018年頃までは横ばい~微減傾向であったものの、以降は減少傾向が続いております。要因としては若年層の減少を高齢者雇用の拡大によって人材不足を補ってきましたが、その余地も限界に近づいており、「採用では補えない人材不足」へと移行している点が大きな特徴です。
これらを踏まえると、製造業の人手不足は「若年層の減少」「製造業離れ」「高齢化の限界」という3つの要因が重なった構造的課題であると整理できます。

人材確保への対応

人材確保への対応に関しては以下のように“外国人労働者の推移”と、“賃金の推移”に関する言及がなされています。

【外国人労働者数の推移】

過去18年における外国人労働者数の推移(図212-5)は、製造業・非製造業ともに増加傾向。
  -製造業における外国人労働者数の変化 :329.0%増加
  (2008年:19.3万人 ⇒ 2025年:63.5万人)
  -非製造業における外国人労働者数の変化:658.5%増加 
  (2008年:29.4万人 ⇒ 2025年:193.6万人)
また、製造業の雇用者数に占める外国人労働者数の割合も増加傾向で、2025年は6.4%となっております。

【賃金の推移】

製造業と全産業の賃金推移を比較したグラフ

過去18年における賃金(所定内給与額)の推移(図213-2)では、
2021年以降の伸びが顕著であり、2022年の物価上昇に伴う賃上げが現在に至るまで、継続していることが推測されます。特に直近の推移は賃上げの水準が高く、年単位でも4%程度の高い伸びを示しています。

(過去18年の推移)
 ●製造業における賃金の推移 :3.66万円増加 (2008年:29.34万円 ⇒ 2025年:33.00万円)
 ●非製造業における賃金の推移:4.15万円増加 (2008年:29.91万円 ⇒ 2025年:34.06万円)
(直近の推移)
 ●製造業における賃金の推移 :1.14万円増加 (2024年:31.86万円 ⇒ 2025年:33.00万円)
 ●非製造業における賃金の推移:1.02万円増加 (2024年:33.04万円 ⇒ 2025年:34.06万円)

これらのデータから、人材確保においては「外国人活用の拡大」と「賃上げによる競争力強化」が同時に進んでいることが分かります。

3.人材育成の課題|企業の8割以上が課題を抱える理由

第1部 第2章 第2節の“ものづくり人材のリスキリングを含む能力開発の現状”では、製造業における能力開発の現状や課題などが言及されております。

製造業における能力開発や人材育成の課題・問題点の内訳

この表は、製造業において、能力開発や人材育成に関する問題があると回答した事業所における、問題点の内訳(表222-2)となります。上位3つは以下のように約45%以上の事業所が抱えている共通課題となっています。

●「指導する人材が不足している」  : 62.8%
●「人材を育成しても辞めてしまう  54.4%
●「人材育成を行う時間がない    45.4%

これらの課題は、「人がいないから育てられない」という悪循環を示しています。
「指導者不足」「時間不足」「離職リスク」が重なり、人材育成が回らない“構造的なボトルネック”が発生しています。
また当社調査においても、OJTへの依存や講師不足、育成時間の不足が主要課題として挙げられており、企業内の育成体制には限界があることが示唆されています。




その他、以下のような言及がなされております。

● 過去17年における計画的なOJTを実施した事業所の割合の推移(図221-1)では、
  製造業正社員は2021年度以降は右肩上がり (2021年度:60.6% ⇒ 2024年度:67.6%)
● 過去17年におけるOFF-JTを実施した事業所の割合の推移(図221-3)では、
  製造業正社員は2021年度以降は右肩上がり (2021年度:70.4% ⇒ 2024年度:76.0%)
OJT、OFF-JTともに長期的に見れば横ばいに収束する可能性はあるが、賃上げタイミングとも呼応していることを考えると、社員が離職しないようにしっかりと育て上げる意識が年々高まっている可能性が推測されます。

●過去5年における自己啓発を行った労働者の割合の推移(図221-5)では、
 製造業正社員は40%前後で推移しています。
 内、自己啓発支援の内容(表221-7)については、以下の3つが上位となっています。
 -受講料などの金銭的援助 :79.9%
 -教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供  :50.5%
 -自己啓発を通じて取得した資格等に対する報酬 :37.5%

●過去15年における能力開発や人材育成に関する問題がある事業所の割合の推移(図222-1)では、
 製造業における推移 :6.9pt増加 (2008年:76.0% ⇒ 2024年:82.9%)
 2019年以降はほとんどの年で80%以上が課題を抱えているという回答となっており、能力開発・人材育成の課題感がひっ迫していることが推測されます。

上記より、製造業における人材育成は、再び「積極投資」のフェーズに入っており、計画的なOJT・OFF-JTともに2021年以降は回復・増加傾向で、教育への取り組み強化が進んでいることがわかります。
一方で、自己啓発は約4割で横ばいに留まり、企業依存の構造は依然として継続。さらに人材育成に課題を抱える企業は8割前後と高止まりしており、育成強化と課題の深刻化が同時に進行している実態が浮き彫りとなっています。

4.ものづくり人材の採用と定着の状況と技能継承について

続いては、第1部 第2章 第3節の“ものづくり企業における人材確保及び定着並びに技能継承”について見ていきます。本節では、採用・定着・技能継承の実態と、その課題が網羅的に整理されています。

製造業各社が実施している技能継承の取り組みと対策

この表は、技能継承を進めるために取り組んでいること(図233-2)に対する回答結果となります。
上位3つの回答は以下となります。

●「再雇用や勤務延長などにより高年齢者従業員に継続して勤務してもらう」:54.5%
●「継承すべき技能の見える化を図る」: 31.2%
●「技能継承の対象となる者を選抜して訓練する」:27.9%

高齢従業者の勤務継続が最も多い結果となっており、技能継承が特定人材に依存しているリスクがうかがえます。

その他、以下のような言及がなされております。

(人材採用の状況)
●ものづくり人材の採用方針(図231-1)では、
 -従業員規模が299人以下の場合は中途採用が中心(40~60%程度)
 -従業員規模が300人以上の場合は新卒採用が中心(43.3%)
● 過去3年(2022-2024年度)のものづくり人材の採用に関する評価(図231-4)は、
  -従業員規模による偏りは少なく、「あまりうまくいっていない」「うまくいっていない」
  と回答した割合は80%前後
●採用がうまくいっている要因(図231-5)の上位3つは以下
 -ハローワークへの求人申し込み:44.5%
 -初任給や賃金等の処遇の引き上げ:40.6%
 -未経験者可とするなど採用要件の緩和:29.7%

(人材定着の状況) 
●ものづくり人材の定着状況の評価(図232-1)では、
 -「良い」「やや良い」という回答が55~60%程度であり、採用や育成に比べると
  課題感が低いことが推察される。
●ものづくり人材の定着に向けて行っている取組(図232-2)の上位3つは以下
 -賃金水準の向上:71.5%
 -労働時間の短縮、休日の増加:37.3%
 -空調・照明・騒音対策等の作業環境の改善:36.6%

(技能継承の状況) 
●技能継承が必要と考えているもの(図233-1)の上位3つは以下
 -「正確・精緻に作業できる技」:66.3%
 -「トラブルや突発的なことが起きたときに対応できる力」:65.2%
 -「加工・作業方法を応用するなど創意工夫ができる力」:59.7%
●会社として技能継承はうまくいっているか(図233-3)という問いに対して
 「あまりうまくいっていない」「うまくいっていない」と回答した割合は65.6%
●技能継承がうまくいっている理由(図233-4)の上位3つは以下
 -「計画的にOJTを実施しているから」:40.4%
 -「指導者と指導を受ける側とのコミュニケーションがよく図られているから」:34.9%
 -「十分な時間をかけているから」:13.2%
将来の技能継承についての考え(図233-5)という問いに対して
 「不安がある」「やや不安がある」と回答した割合は85.5%
●将来の技能継承についての不安(図233-6)の上位3つは以下
 -「熟練技能者の高齢化・退職が進んでいる」:63.0%
 -「若手が採用できない」:57.0%
 -「中堅従業員が不足している」:51.9%

上記より、製造業の人材課題は「採用で人を確保できない問題」から「育成と技能継承が進まない問題」へとシフトしているといえます。 採用・定着・技能継承それぞれに異なる課題があり、人材問題が複雑化している点が特徴です。


まとめ|製造業の人材課題は「採用」から「育成」へシフトしている

ものづくり白書2026の分析から、製造業の人材課題は「人材不足の深刻化」と、それに伴う「育成・技能継承の停滞」にあるといえます。企業は賃上げや採用強化を進めているものの、採用は依然として難しく、多くの企業が苦戦しています。

一方で、定着は一定の成果が見られるものの、技能継承は6割以上が課題と認識され、将来に不安を抱える企業も多い状況です。背景には熟練者の高齢化や中堅不足、若手採用難があり、「人がいないため育てられない」という構造的な問題がより明確になっています。

こうした状況から、製造業の人材不足は単なる採用難ではなく、「採用・育成・技能継承が連動した構造課題」です。今後は未経験人材の戦力化と、体系的な育成体制の構築が重要になります。

ティーネットジャパンの製造業向け技術研修サービスのご紹介

こうした白書の分析結果からも明らかなように、今後は「未経験者を前提とした育成」が不可欠です。特に、社内での指導人材不足や育成時間の制約がある企業ほど、外部研修の活用が重要になります。当社では、文系・未経験から技術者を育てる体系的な研修を提供しており、現場で求められる基礎技術の習得から戦力化までを支援しています。

本研修の特長
● 機械・電気・生産技術者など、現場で本当に必要とされる基礎技術に特化
● 文系出身者や異業種からの転職者でも理解できる、段階的・体系的なカリキュラム
● 新入社員だけでなく、若手〜中堅技術者のリスキリングにも対応可能

「機電系学生が採れない」「経験者が集まらない」という状況でも、“育てる前提”で人材を確保し、戦力化することで、採用市場の変化に左右されにくい体制作りが可能になります。



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